ジェンダーワークショップ

毎晩ベッドを占拠されてます。

職場で「ジェンダー・ワークショップ」というものが開かれた。
要はアフガン人スタッフを対象に、
講師のジェンダースペシャリストという人が、
ジェンダーって何?それにまつわる問題とは?
アフガニスタン社会で、あなたの職場で、問題はない?
と問いかける「とっても啓蒙的」かつ「おせっかい」な内容である。


なぜか私たち外国人スタッフも出席させられる羽目になったが、
あまりに初歩的な内容と、
朝8時から夕方5時近くまでという気の遠くなるような長さのため、
意識がウルトラM78星雲の彼方まで飛んでしまうことしばしばであった。


しかし、アフガン人のコンサバとはこういう考え方をする連中なのか
と、こちらが「蒙を啓かれる」興味深い会話があったので、
ここにシェアしてみたい。


男A「僕はあなた(講師)の男女の雇用に平等な権利を与えるという考えに賛成だけれど
  例えば兵士はどうなんだ?女性にまで兵士をさせるのか?!」
講師「でもアメリカやヨーロッパの国などでは、女性が兵士になっているわよね」
男B「アフガニスタンは5000年の歴史(そんなにあるのか?)の間に、
  一度たりとも女性を兵役につかせるようなことはさせなかった。
  アメリカなんてせいぜい2,3百年だろ。
  5000年の歴史をそんな簡単に変えることは絶対にすべきではない。
  兵士だけじゃない。首相、大統領、政治家にも女性はなるべきじゃない!」
(ここで女性参加者が騒然)
女C「なんで女性は政治家になってはいけないの?
  パキスタンやインドでは女性が首相にまでなっているじゃない。
  あなたの言っていることの理屈がわからないっ!」
(男Bは返答できない、が納得はいっていない様子)
男D「Bの言っていることには賛成できないな。時代は変わってきているんだよ。
  女性もこれからは政治に参画すべきだよ。 
(女性陣は納得の様子。私もちょっと感心)
  でも一つだけ女性がしてはいけない職業があると思う。
  (したり顔で)


  それは裁判官だ。」


(女性陣は先ほど以上に騒然。私もドリフの学校シリーズの志村の如く
 ずっこけそうになった。折角さっきまで物分りがよさそうなこと言ってたのに。)


B君にしてもD君にしても彼らは何の疑いもなく当然だよという面持ちで、
上記のような意見を言っていた。
しかし思った。
彼らの論を日本人のパースペクティブから笑うことは簡単だろう。
でも日本にしたって女性首相を輩出したことはないし、
先進国の中で女性が政治家・CEOを担う率は最低レベルに近いし、
女性裁判官だってほとんど見たことがないし、
ものすごく巨視的に見たら、日本もアフガニスタンも五十歩百歩なのかもしれない。


それに5000年の歴史云々はともかくとしても、
彼らにはこの地の諸制約の中で培った
彼らなりの「物事に対する処し方」というものがあり、
それを日本や西洋的視点で一刀両断することが果たして生産的な態度なのか、
と問われると、答えを見つけるのは困難だ。


実はこのあたりの社会通念・規範の問題は、
紛争の発生要因に複雑に絡まりあっている。
このあたりを解きほぐす努力も同時に地道にしていかないと、
いくら外から平和維持部隊やら経済支援やらを投入したところで、
潜在的な問題は常に温存することになる。
一説に寄ればアフガニスタンでは「テロ、反政府活動」などの戦闘行為よりも、
土地所有権、水利権をめぐる問題と並んで
女性を巡る社会通念から引き起こされる暴力沙汰(しばしば殺人事件に発展する)
の方が深刻だと言われる。


このあたりを自分としても本当はもっと切り込んで調べてみたいと思うのだが。
研究者やジャーナリストでそのあたりのことに関心をお持ちの方がいらっしゃれば、
是非ご教示していただけると有難いです