私のドライバーRさん

私のドライバーRさんは40歳前後。性格は温厚、簡単な英語の会話ができ、気配りが常に行き届いた、私にとって重宝するドライバーだ。元々学校の先生だったが、紛争を経て教師の給与が相対的に下がり、とても家族を養っていけないということでドライバーになった。でも本当は教えることが好きで、給与の問題さえなければ今でも教職につきたいと思っている。そして何よりも子供好きだ。運転中に道すがら子供から手を振られると必ず手を振り返す。それも嬉しそうに。

彼には一つくせがある。それは肉屋の前を通るとき、店先につるされた肉を凝視してしまうのだ。アフガニスタンの肉屋は豪快だ。それこそ牛や羊が一頭まるごと皮を剥がれてつるされていたりする。たぶん、いい肉があったら家に買って帰ろうと常に考えているんだろう。だから肉屋が軒を並べた通りでは注意力が散漫になって、運転が危なっかしくて仕方ない。しかし肉を吟味する彼の視線があまりに真剣なので、ついついおかしくて、注意するのが憚られる。