アフガン人男性の結婚事情

どの民族にとっても結婚は人生の大きなイベントだろうけれど(もちろんそうでない人々も間々いるけれど)、アフガン人男性にとってその意味は至極大きい。

一つにはダウリー(持参金)が頗る高いことによる。インドと違い、アフガニスタンでは男性側(親もしくは本人)が持参金を払う。ダウリーは現金のみの場合と、家具や電化製品のような物品を含む場合もある。が、どちらにせよ大変な額である。以前通訳のT君から聞いた話によると、数千ドルから一万ドルくらい払うらしい(ただし一般的な金額かどうか、ちゃんと調べたわけではないが)。その金額の意味は、親に蓄えがあるか、よほどの高給取りでない限り、アフガン人には容易に払えるような額ではないということだ。なので婚期が10代後半から20代前半とかなり早いアフガニスタンで、婚約相手はいるものの20代後半、30代になっても持参金をこつこつ貯めるべく未婚のまま働き続ける者や、持参金稼ぎに海外に出稼ぎに行く者がかなり多い。

また、結婚は当然するものという通念がとても強いことによる。そして自由恋愛が未だにタブーである(カブール等では一部家庭で若干異なるらしいが)。ちなみにいとこ同士で結婚することが多く、結婚相手は親同士が決めるケースが9割方ではないかとT君は言っていた。自由恋愛が許されない状況では、語弊を恐れずに言えば、性的交渉をもてるのは結婚する以外にないのである。なもんで、「溜まりに溜まった」青年諸君は大半がもんもんとした日々を送っているか、こっそり「売春宿」にいくか、かなりの危険を覚悟で自由恋愛を模索するか(ばれれば社会的制裁やそれこそ私刑を受ける)、はたまたこんな風に期間限定婚をすることになる。ちなみにT君は27歳でスンニ派であるが、半ば冗談半ば本気で、この期間限定婚を検討していた。私の直感ではあるが、こういう「もんもん」とした状況をいかに社会システムが解消するかって、社会の安寧を図る上で結構大切なことなんじゃないかと思う。その観点からしても、一友人としても、T君が早く妻を娶り、幸多からん人生を送れることを切に願っている。