弾薬回収作業(2)

前回の寄稿からすっかり日数が経ってしまった。
パンジシールの弾薬回収作業はゆっくりと進んではいるが、
前途に大きな壁が立ちはだかっていることに変わりはない。


さて、パンジシールで弾薬・武器回収作業を進めていく上で
現地の人々から作業への反対理由としてあげられる一つが
アフガン南部・東部で勢力を維持するタリバンの存在である。


近い将来に国全体のセキュリティーを脅かすほどの勢力を
タリバンが維持しているわけではない。
それはアメリカや欧州から派遣されている
掃討軍と治安維持部隊の抑止力がある程度効いているのと、
タリバンがそのラディカル性により
必ずしも多くの支持者を得られていないということにもよる。


しかし、90年代から2001年にかけて勢力争いを続けてきた
北部同盟の中核グループ、パンジシール閥(そしてパンジシールの人々)にとって、
タリバンの復活が最も恐怖心を煽られるシナリオであるのは想像に難くない。


また本来タリバンのような反政府活動を抑えるべき政府(とりわけ国軍、警察、情報機関)
の力がまだ発展途上なため、政府に信頼を置くことができないという理由もある。


更に、元来パンジシールの人々は、アフガン人の中でも一際独立心が強い。
自分の身・家族の身は自分たちで守り、政府の言うこと、お上の言うことなど
構わないという独立不羈の精神を持つ。


それゆえ、パンジシールの人々を私たちのロジック(つまりアフガン政府を強化し、
その過程で正当性を付与していく)に従わせることは、そもそも難儀であり、
また彼らは将来起こりうるタリバンの再決起に備えて、兵器や弾薬を保持しようとする。


パンジシールのとある大物は、私たちのプロジェクトへの反対を公言して憚らない。
国際政治学のリアリズム的思考で言うところの「勢力均衡」という考え方を取れば、
パンジシールの人々のロジックも一理あるかもしれない。


しかし、パンジシールの人々の言い分を額面どおりに受けるわけにはいかない。
そもそも彼らが懸念するほどタリバンは勢力を増しているのか。
タリバンが、1995年にカブールに侵攻したときのような勢力を有しているとは見えない。
せいぜい散発的に爆発物を仕掛けたり、東部・南部でゲリラ的活動を行うレベルである。


またパンジシールの人々が武器や弾薬を不正取引しているという噂もある(確証はない)。
ただ、カラシニコフのような「使える」「取引価値のある」武器やその弾薬は
回収時にほとんど出てこない。


そこで中長期的な処方箋になるが、私の考えをまとめてみたい。
究極的には、タリバン穏健派の取り込み(政治プロセスへの参加容認)と
強硬派の逮捕、そしてタリバンの解体を目指す必要があるだろう。
またタリバン(とその支持層)と反タリバン派(とその支持層)との和解、
あらゆる戦争犯罪の処罰(正義の貫徹)等の措置を通じて、
法による統治を追求せねばならないだろう。


すべてを解決する妙案があるわけではない。
タリバンに関する問題を解決するには、上記のような方向性を
ひたすら地道に追求する以外にないだろう。


そのためには国内のみならず、国外、とりわけキーアクターである
パキスタンアメリカの関与の仕方にも目を配る必要がある。