音楽と風景

車での移動中、
MP3プレーヤーで音楽を聴いているときに時々感じたんだけれど、
音楽そのものの良し悪しに関係なく、
音楽が風景に馴染まないと浮いて聴こえることがある。
逆に言えば、風景にシンクロするとその音楽は「リアル」に蘇る。


一番浮いて聞こえたのは、椎名林檎だったな。
多分新宿とか渋谷では彼女の歌ってシンクロするんだろうけれど、
アフガニスタンの自然や町の生活風景に、彼女の歌はとげとげしすぎていて、
その歌の持ついい意味での猥雑さが耳障りに聞こえた。


逆に一番シンクロしたのは当然なのかもしれないけれど、
アフガン民謡だった。
音が風景に染み込んでいく感じ。
もしくは風景を音にしたらその民謡になりました、
と言ってもいいくらい、シンクロしていた。
音楽って外界から与えられたインスピレーションを
身体や楽器という媒体を通じて音やリズムを駆使して
表現したものなんだなぁと、
ある意味当たり前すぎるかもしれないことを実感。
でもとことん頭で考え抜いたような音楽もあるから、
この感想は当たり前とはいえないかもしれないけれど。


バッハのゴールドベルグ変奏曲の効果も半端でなかった。
聴いているとこの世の秩序が浮き彫りになってきて、
パンジシールの風景を見ながら、
あぁこの世はこういう風に成り立っているのね、と
悟ったような錯覚に陥った。


あと、意外にシンクロしたのは、ピンクフロイド
サラン峠という山道を駆け抜けているとき、
あの狂気すれすれのような音が、
周囲に屹立する山並みと妙に合っていて、
ものすごい鳥肌が立って、涙腺が緩んだ経験がある。
音楽が持つ垂直の力(彼岸と結びつかせる力とでも言えばいいかな)によって、
天啓に打たれた、
そんな感じだったのかもしれない。