煩悩には勝てぬ

ラマダンが始まって5日目。
現地スタッフは思っていたより飄々と断食をこなしている。
聞くところによると、大体14歳くらいから断食の習慣を始めるようだ。
とはいっても全員が100%断食を実行しているかといえば、
そんなことはないようだ。
そりゃ、信仰篤いものもいればそうでないものもいるだろうしね。
でもピアプレッシャー(世間体)があるから、
こっそりと陰で腹ごしらえをせざるを得ない。


前回「最初の一週間がきついらしい」と書いたが、
正確な情報ではなかった。
最初の一週間というのは、喫煙者にとっての話。禁断症状がでてきてきついらしい。
断食という意味では、最後の四週目あたりが一番きついとのこと。
体に蓄積されている様々な栄養素が枯渇していくのだろう。


でももっと深刻なのは水分摂取ができないことだと思う。
9月・10月の日中は結構まだ暑い。
まともに外で仕事していたら、脱水症状になりかねない。
またラマダンはイスラム暦に基づいており、夏にずれこむこともある。
そんなときは一体どうやってサバイブしているのだろう。


しかし、「ラマダン中、守るのが一番難しいことは何だ?」
とアフガン人男性スタッフに聞いたら、


即答、
「(きれいな)女性を見ないようにすること。」


ちなみにこの質問と回答は、
性行為やふしだらな妄想を抱くことを
ラマダンが禁じていることに由来している。
しかし私の見るところ、
ラマダン中だろうが、ドライバーのほぼ100%はよそ見運転を止めていない。
ブルカを頭から足までスッポリと被っている女性がまだ多いアフガニスタンで、
顔を出して闊歩する若い女性はアフガン人男性に好奇の目で見られることが多々ある。
ドライバーたちもその例に洩れず、
「よそ見運転」なんていう生易しい響きではなく、
運転中も「食い入るように」そういう女性を注視するもんだから、
危なっかしくて仕方がない。
彼らの貴重な「娯楽」はアッラーのお達しをもってしても止めることは出来ない。


ところで、以前何かで読んだのだけれど、
男性は視覚で欲情することができるが、女性はできない。
女性は物語性で欲情する(ちょっとこの点は記憶があやふや)。
だから男性はエロ本とかエロビデオなんかでも容易に興奮するけれど、
女性はそういう刺激では興奮しないらしい。


そう考えると、(アフガン人)男性がよそ見運転を容易に止められないのは、
男性性に基づく生物学的もしくは大脳生理学的な理由があるということか。
それプラス、女性との接点が少ない、女性の顔貌にまみえる機会も少ない、という
社会的制約・タブー感ゆえに、余計に「よそ見」衝動に駆られるのかもしれない。


もしこの仮説が合っているのなら、
よそ見運転するドライバーにすこしだけ同情しちゃうなぁ。