Yさんのこと

ここ最近Yさんを囲んでちょくちょく飲んでいる。
Yさんはアフガン援助関係者の間で知らぬ人はいない著名な方だ。
以前はごく偶に邂逅して軽く会釈するくらいの関係に留まっていたのだが
最近ひょんなきっかけからそんな関係が始まった。


お話を伺ってその人となりを知れば知るほど
世間と呼ばれる垣根を軽々と飛び越えて
常識と呼ばれる柵から解き放たれた
稀有な才能と遍歴をお持ちの方だなぁと感動する。
読書量も半端でない。会話をしていると
数多ある脳内抽斗をほいほいと手品のように広げていく。
もう一つ、私の中でYさんのイメージを構成するのは
著書やインターネット、メーリングリスト上に繰り広げられる
卓越した洞察力とセンスを兼ね備えた流麗な文章だ。
実は私はYさんの変幻自在な文章に魅了され続けてきた一読者だった
と言ったほうが正確かもしれない。
その文章の中でYさんは
あるときは虫となって這い歩きながら、どんなに微細な表象や感情の機微も掬い取り、
またあるときは鳥となって高々と飛翔し、社会や人々の間に縫い込まれた目に見えぬタペストリーを鮮やかに再現する。
長年アフガニスタンパキスタンイラクなどで援助関係の仕事に従事されながら、
その透徹した目を通じて援助という名の理不尽と欺瞞を、災禍に見舞われた人々の苦難と辛酸を、
同時代に生きる者としてネット上に刻み続けてきた。


おそらくご本人はこういう「褒め殺し」を一番嫌がるだろうから、
持ち上げるのはこれくらいにしておこう。
正確を期すれば、Yさんの人間としての魅力は「清濁併呑」的な部分にあるから、
ここには書けないようなことを伺うことにまた面白みがある。


論より証拠ということで、ネットで読めるYさんの文章を読んでいただきたい。


個人サイト(「仕事」に文章が掲載されています)
http://www.i-nexus.org/yoshi/indexJ.html


まずは私の一押しである、『紛争再考』、『援助プロジェクトについての覚書』シリーズ、
そして『Falluja1・2』に目を通していただきたいと思う。
おそらくYさんの奥深さと繊細さが同時に判るだろう。
その他の文章ももちろん才気が迸っている。


更に知っていただくにはYさんの著作を読むのが最良だ。


カブール・ノート 戦争しか知らない子どもたち

カブール・ノート 戦争しか知らない子どもたち


文章の巧みさもさることながら、アフガニスタンの近年の混沌を知る上で
欠かせない一冊である。


*実は上記の個人サイトや著作リンクからYさんがどなたかは一目瞭然なので
お名前をイニシャルにする意味はほとんどないのであるが、
ご本人の性格を慮るに、あまり大っぴらなご紹介は本来望まない方と思われるので
このブログでは露出を極力少なくすべく
Yさんと呼称し続けることにする。