警察再建

SSRの一分野であるAfghan National Police(ANP)の再建。
DIAGとも深いリンケージがあるのだが
なかなか思うように再建が捗っていないという噂話しか聞いたことがなく、
進捗に関する裏事情、詳細情報が全く伝わってこない。
というか単純に私のリサーチ不足なんだろうけれど。


この記事を読んでも全体像が早分かりするわけでもないんだけれど、
EUNATOの一部とで意外な足の引っ張り合いがあるらしく、その点が興味深かった。


Breaking News, World News & Multimedia - The New York Times


あんなところのいがみ合いがこっちまで波及して支援が滞っちゃうとは
支援されるアフガニスタンもたまらんわな。
国家再建・復興支援だなんて綺麗ごと言ったって、
どこの国もやっぱり国益追求して何ぼなんだなと。


ふと連想したエピソードがある。
旧ユーゴから独立して間もないマケドニア
台湾と突然国交を樹立した。
それに対し怒髪天を衝いた中国は
当時マケドニアに紛争予防のため展開していたPKOに対して
安保理で拒否権を発動して派遣を中断させ、
それをカードに結局マケドニアに中国との国交への鞍替えを飲ませた、
あの血も涙もない冷徹な国際政治のエピソードを思い出した。
こういう事例を聞くと、
国益追求のためにはもう人道的支援とか平和構築とか
関係ないんだなという気がする。
これはちょっとあまりに露骨だったんで、
マケドニア人の友人も当時「えげつない」と中国に対して怒ってたなぁ。


でもそもそもドイツがアフガン警察再建のLead Nationとして当初コミットしながらも
その後アメリカが何故かなりの役割を肩代わりしたのか、
そしてEUに更に権限委譲したのか、その政治的背景は何なのか。
単純にドイツやアメリカが軍事ミッションに手一杯で
警察再建に注ぐための十分なキャパや政治意思がなかった
というだけなのかもしれないが、明確な理由はいまだに聞いたことがない。


あと、記事の後半のかなりの部分プラス結論が
結局警察官の給料が安いから質が悪いんだというまとめ方も
そりゃ高いに越したことはないんだけれど、
なんだかなぁ、ちょっとまとめ方としては安直すぎるんじゃないかと。
それより中盤で識者が触れているシステムの構築の必要性について
もっと突っ込んだ分析を書いて欲しかった。
さらに欲を言えば、XXX派の連中がMoIを牛耳ってるとか、
その政治的影響力を笠に着て、あくどいことやってるChief of Police
(日本で言うところの県警本部長)がたんまりいるとか、
ちょっと前まで軍閥長だったのに
いつの間にかChief of Policeにちゃっかり納まってるやつがいるとか、
要は私利私欲とか権力偏在の象徴になっている観があって
公正な警察システムが築けないということを指摘して欲しかった。
そんな内実を見ていると、「警察のキャパシティービルディング」とお題目は良いけれど、
懸命にトレーニングコースを運営しているEUの一見「全う」な取り組みが
果たして治安の向上にどれだけ役立っているのか。
Evaluation Reportとか読んでみたい気がする。


日本はPKOへの協力とはいっても軍事的な参加が政治的に未だ困難な状況の中、
むしろ文民支援、そして警察支援にこそもっと力を入れていくべきなのではという議論が
一部で盛り上がりつつあると仄聞する。
でも一般論として内務省とか警察ってものすごい権力機構で、
国家が国家たるゆえんの暴力装置の権化みたいなもので、
権力争いとか汚職とか収賄とか、黒い噂が後を絶たないところでもある。
そこに「支援」という美名であろうと、首を突っ込むことの覚悟と能力が
日本にはどれだけあるだろうか。