ミャンマーの情勢分析

最近のミャンマー動乱について、背景や分析がよくまとまっている論説をご紹介。


JIIA -日本国際問題研究所-
ミャンマー情勢を動かす三つの要素を分析する―周辺国の多角的取り組みは実現するか


よく言われる日本とミャンマー軍政との根深い関係についての説明が端折られていて、
そこだけちょっと物足りなさを感じたものの、
軍政内の権力構造とか、なぜ仏僧が立ち上がったのにも関わらず、
軍政転覆までには至らなかったのか、
詳細に通じていなかった私には
なるほどー、と納得の論考でした。

カブールでゴルフ・・・

って、北極でサーフィンとか、ジャマイカボブスレーとか(それはいたな)、それくらい逸脱行為ですよね。
でも実はあるんですよ、ゴルフコースが。


http://www.nytimes.com/2007/10/15/world/asia/15afghan.html
NY Times, A Golf Course Where Water Is No Hazard


上の記事を見てもらうと判るとおり、
ゴルフ場はちょっと何ちゃってな代物ですが、
サラン峠の雪山をスノーボードとか、
バーミヤンの大仏跡、瑠璃色のバンダミール湖、秘境ワハン回廊、アレクサンドロス大王が残した建造物等々、
治安さえ向上すれば観光・レクリエーションとしてアトラクティブな場所は結構あるんですよねぇ。

軍と人類学者

一、二週間前から朝夕めっきり冷え込むようになった。
今朝出勤時にふと庭の木々に目をやると、葡萄棚に生い茂った葉が茶色く色づき始めていた。
奇しくもその数分後、iPodからCannonball AdderleyのAutumn Leavesが流れてきて、その偶然に秋の本格的な到来を耳からも実感した気がした。


そういえば仕事に行くにも素足にサンダル履きでずっと通していたハウスメイトは昨日、四月以来初めて靴下を履いたと少々興奮気味に話していたな。
そして今朝、同僚の一人は早くも冬用のもこもこしたハーフコートを着ていた。それは幾らなんでも早すぎでしょ(笑)。
とはいっても彼の場合、インドのバンガロールという冬でも15度くらいまでしか気温の下がらない土地の出身なので、そもそも肌が寒さに慣れていないのだろう。それにしても、カンジーをもっと人懐っこくしたような顔のこのインド人のおっさん、今からこの格好でマイナス15〜20度まで下がるカブールの冬を生きて越せるのだろうか。


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アメリカの人類学者がアフガニスタンイラクにおけるアメリカ軍の活動に関わっているという。色々と考えさせられる、よい記事だ。


Army Enlists Anthropology in War Zones - The New York Times


記事から思い出したのは、日本との太平洋戦争においてアメリカ軍がルース・ベネディクトら人類学者を招集し「未知なる」日本人の性質を学術的に分析させ、その研究結果をもとに戦争を有利に運ぼうと努めた逸話だ。


Ruth Benedict - Wikipedia


しかし、アフガニスタンにおける人類学者の役割はいくつかの点でベネディクトらとは異なる。まず、ベネディクトらが日本に全く訪れたことがなかったのに対し、アフガニスタンで人類学者らは部隊と共に現場で行動し、個々の治安維持活動にまで関わっているという点。またもう一つは目的に関して。ベネディクトらの研究成果は、究極的には日本との戦争への勝利に資することが期待されていたと思うが、アフガニスタンに従軍する人類学者はアフガン人とアメリカ軍との相互理解を深めて「戦闘」を減らすことが大きな目的だという。


記事に拠れば人類学者が投入されてから実際に戦闘数が60%も減ったとあり(もちろん減少の要因全てをこの人類学者たちに帰するのは無理があると思われるが)、この試みに私は注目したい。無益な戦闘をできるだけ減じるだけでなく、戦争の究極的勝利は“戦わずして人の兵を屈する”(『孫子』)ことに存するだろうから。あ、そういう意味では究極的にはアフガニスタンにおける人類学者も勝利に資することが期待されていると言えるか。


他方、この人類学者らの活動やアドバイスが、戦闘を減ずるという目的に反して利用されてしまう可能性があるのは否めない。例えば彼らのアドバイスを別の者が敵愾心を煽るために利用しアフガン人同士を敵対させるとか。また彼らの意思決定が部隊の意思決定にどのように組み込まれるのか、またどのくらい尊重されるのか、このあたりが非常に気になるところだ。今のところ彼らの役割を過大評価することに私は慎重である。というのもまだ彼らの人数・予算・活動場面が限定的だからで、アメリカの軍事・外交戦略策定に参画するような役割は与えられていない。彼らのような素養や経験がもっとそのような戦略策定プロセスに生かされるべきだろう。それが現在のアフガニスタンイラクでのアメリカ軍の行き詰まりを脱却させる一つの手立てかもしれないと思うのだ。


この人類学者たちには残念ながら会ったことがないが、アメリカの部隊にはアフガン人通訳が必ず行動を共にしており、彼らと話すことも時折あった。多くは現地の若者であるが、中にはアフガン系アメリカ人もいて、アメリカがまさに多民族国家であることを実感する。このようなアフガン系アメリカ人通訳は元来アフガニスタンからの移民なので、アフガニスタンの文化に通じている。英語に関してもほぼネイティブ並みであり、英語力に往々にして難がある現地採用の通訳と比べ、軍関係者とのコミュニケートもスムースだ。彼らの文脈に即した巧みな通訳が、アメリカ軍と地元関係者との間の摩擦を減じるのに多大な貢献をしていることは想像に難くない。余談ながら私自身も通訳の質が仕事の質に大きく影響することを身をもって経験しており、通訳という存在はプログラムの成否を決める隠れた大事な要素だと感じている。彼らは通訳の場面で間接的ながら人類学的素養の実践をその都度求められているとも言えるだろう。

頑固一徹凧職人

「オイラにとって凧はよぉ、息子みてぇなもんだ。かわいいもんよ。」
「オイラは凧作りだけじゃぁねえ。凧を揚げさせても右に出る奴あいないよ。」
「(The Kite Runnerという映画に主演する)小僧どもに凧揚げを仕込んでやったさ。最初は六回教えてもうまくなりゃしねえ。七回目にはひっぱたいてやったさぁ。」
「オイラんところにゃじゃんじゃか人がやってくるよ。内務大臣より偉いかもな(笑)。」
「オイラのご先祖様は代々数百年ここに住んどる。オイラの家はここだけさ。」


月収1500ポンド(約35万円)というアフガン人としては相当の稼ぎを上げているにもかかわらず、
いい家に移り住むわけでもなく、
The Kite Runner原作の映画製作を技術指導して欲しいと中国まで招聘されても
凧作りの仕事に差し支えるからと断ってしまうヌルアガさん。


でも自分の凧が登場するその映画を心待ちにしている。


「観るのが楽しみだよ。なんせ、世界中で映し出される凧はオイラのだからな。」


http://www.dailymail.co.uk/pages/live/articles/news/worldnews.html?in_article_id=484766&in_page_id=1770&ito=1490

警察再建

SSRの一分野であるAfghan National Police(ANP)の再建。
DIAGとも深いリンケージがあるのだが
なかなか思うように再建が捗っていないという噂話しか聞いたことがなく、
進捗に関する裏事情、詳細情報が全く伝わってこない。
というか単純に私のリサーチ不足なんだろうけれど。


この記事を読んでも全体像が早分かりするわけでもないんだけれど、
EUNATOの一部とで意外な足の引っ張り合いがあるらしく、その点が興味深かった。


Breaking News, World News & Multimedia - The New York Times


あんなところのいがみ合いがこっちまで波及して支援が滞っちゃうとは
支援されるアフガニスタンもたまらんわな。
国家再建・復興支援だなんて綺麗ごと言ったって、
どこの国もやっぱり国益追求して何ぼなんだなと。


ふと連想したエピソードがある。
旧ユーゴから独立して間もないマケドニア
台湾と突然国交を樹立した。
それに対し怒髪天を衝いた中国は
当時マケドニアに紛争予防のため展開していたPKOに対して
安保理で拒否権を発動して派遣を中断させ、
それをカードに結局マケドニアに中国との国交への鞍替えを飲ませた、
あの血も涙もない冷徹な国際政治のエピソードを思い出した。
こういう事例を聞くと、
国益追求のためにはもう人道的支援とか平和構築とか
関係ないんだなという気がする。
これはちょっとあまりに露骨だったんで、
マケドニア人の友人も当時「えげつない」と中国に対して怒ってたなぁ。


でもそもそもドイツがアフガン警察再建のLead Nationとして当初コミットしながらも
その後アメリカが何故かなりの役割を肩代わりしたのか、
そしてEUに更に権限委譲したのか、その政治的背景は何なのか。
単純にドイツやアメリカが軍事ミッションに手一杯で
警察再建に注ぐための十分なキャパや政治意思がなかった
というだけなのかもしれないが、明確な理由はいまだに聞いたことがない。


あと、記事の後半のかなりの部分プラス結論が
結局警察官の給料が安いから質が悪いんだというまとめ方も
そりゃ高いに越したことはないんだけれど、
なんだかなぁ、ちょっとまとめ方としては安直すぎるんじゃないかと。
それより中盤で識者が触れているシステムの構築の必要性について
もっと突っ込んだ分析を書いて欲しかった。
さらに欲を言えば、XXX派の連中がMoIを牛耳ってるとか、
その政治的影響力を笠に着て、あくどいことやってるChief of Police
(日本で言うところの県警本部長)がたんまりいるとか、
ちょっと前まで軍閥長だったのに
いつの間にかChief of Policeにちゃっかり納まってるやつがいるとか、
要は私利私欲とか権力偏在の象徴になっている観があって
公正な警察システムが築けないということを指摘して欲しかった。
そんな内実を見ていると、「警察のキャパシティービルディング」とお題目は良いけれど、
懸命にトレーニングコースを運営しているEUの一見「全う」な取り組みが
果たして治安の向上にどれだけ役立っているのか。
Evaluation Reportとか読んでみたい気がする。


日本はPKOへの協力とはいっても軍事的な参加が政治的に未だ困難な状況の中、
むしろ文民支援、そして警察支援にこそもっと力を入れていくべきなのではという議論が
一部で盛り上がりつつあると仄聞する。
でも一般論として内務省とか警察ってものすごい権力機構で、
国家が国家たるゆえんの暴力装置の権化みたいなもので、
権力争いとか汚職とか収賄とか、黒い噂が後を絶たないところでもある。
そこに「支援」という美名であろうと、首を突っ込むことの覚悟と能力が
日本にはどれだけあるだろうか。

タリバンがソフト路線?

アフガニスタン南部に位置するヘルマンド県。ドライフルーツが名産であるこの県には国際治安支援部隊ISAF)のイギリス軍が治安維持のため駐留しているが、他方この県はタリバンが実効支配しているともいわれる。ヘルマンド県はケシの栽培地としても有名で、他県を凌いで圧倒的な生産量を誇る。そのヘルマンド県の一地域に分け入って、住民の置かれた状況を浮き彫りにする優れた記事を目にした。


Institute for War and Peace Reporting | Giving Voice, Driving Change


イギリス軍の戦況報告によると、ここ最近はかなりイギリス軍優勢に戦況は進んでいるとのことだったが、上の記事を読むと結局のところタリバンがヘルマンドを実効支配していることに変わりないのかもしれない(ただしMusa Qalaだけが例外ということはありえるが)。


記事でも触れられているが、Musa Qalaという村は一時期ある試みによってメディアを賑わした。というのもイギリス軍がタリバンとの戦闘によって一般市民の犠牲を巻き込まないよう、この村内では戦闘は行わないという紳士協定をイギリス軍がMusa Qalaの長老たちと結んだからである。その換わりに長老たちはタリバンを村に寄せ入れないことを期待された。当時このPeace Zoneという試みを画期的と評する者もいれば、“テロリスト”の思う壺と揶揄する者もいた。その後イギリス軍の拙攻もあったようで、果たしてMusa Qalaはタリバンの手に戻った。


この記事の肝は、タリバンがソフト路線を敷いて住民のHearts and Mindsを勝ち取ろうとしているという内容だろう。彼らをイスラム原理主義者と言わせしめた数々の施策は鳴りを潜めた。住民はテレビや音楽に興じることもできる。喜捨も強制されない。髭を伸ばそうが伸ばすまいが自由、ケシ栽培も自由。アフガン国軍や警察は村に近づけないので麻薬取引も活発に行われているようだ。これらは90年代から2001年までのタリバン統治時代にはありえなかった柔軟姿勢だ。数ヶ月前だったかタリバンアフガニスタンで学校運営を計画していると話題になったが、まさに教育を施す、治安を維持する(警察行為)といった活動領域にまでタリバンは手を広げている。その分、徴税や物資徴収、徴兵(強制ではない)も行っており、さながら自治政府のような機能を果たしているようだ。これら事例が示しているのは、アフガン政府、地方政府そしてISAFが、住民の期待する治安維持活動、公共サービス、開発支援を十分なレベルで提供できていなかったことの裏返しなのかもしれない。


ただし一つ注意しないといけないのは、この記事の後半にも記述があるように、このような柔軟姿勢が一時的、表面的もしくは局所的かもしれないということだ。記事全体からはタリバンへの恐怖心・猜疑心を拭い去るまでには至らない人も依然多いということが伝わってくる。


更に注意すべきは、この傾向を持ってしてタリバン全体を語るのはまだ時期尚早ということだ。そもそもタリバンは一枚岩の磐石な組織ではないと言われる。成員一人一人が同一の戦略・行動方針をシェアした統制の取れた軍隊のような組織ではない。


とはいえ、ここまで硬軟巧みに織り交ぜた戦略・活動で住民のニーズに応えるタリバンに完全に打ち勝つのは、アフガン政府や国際社会にとって至難の業に違いない。レバノンヒズボラスリランカLTTEのように、“国際社会”からはテロ組織・武装組織と烙印を押されていても、現地では実質自治政府の機能を果たしている反政府グループの例は枚挙に暇がない。ここアフガニスタンでも軍事的な争いのみでなく、ガバナンス能力を競い合う、Legitimacyを巡る熾烈な争いが始まったのかもしれない。

世界で何番?

このサイトのこと、既にご存知の方もいるかもしれませんが、
自分の年収を入力すると、その年収が世界で上から何番目で
何パーセントに位置するかが分かります。
(もちろん概算でしょうけど)


Global Rich List


早速やってみました。
私って実はなかなかの金持ちだったんですね(笑)。


で、このサイトはそれだけに留まらず、寄付を促すサイトにつながってます。
「自分で思ってたよりも金持ちでしょ?困ってる人にちょっと還元しなさいよ」と。
いくらあればこんな薬が買える、いくらあれば某国の村中の子供に教育を施せる等、
なかなか考えてありますね。